企画上映

アジアのニューウェーブ 第1期:韓国


12月4日(木)~20日(土)

新しい才能の登竜門・PFFアワード2025入選作品上映に合わせ、映画のあり方を根本から変え、アジア映画にも波及したニューウェーブを特集。1980年代韓国に起きた「新しい波」と2025年の「新しい波」を同時に見つめる。

(9作品/すべて福岡市総合図書館収蔵作品/35ミリフィルム上映/日本語字幕付き)


観覧料: 
大人=500円/大学生・高校生=400円/中学生・小学生=300円
福岡市在住の65歳以上の方・わたすクラブ会員=250円(要証明書・会員証原本提示)/障がい者の方および介護者の方1名=無料(要証明書提示)


Column  

 11月から12月にかけて、たくさんの韓国映画を上映します。11月は韓国のアート系の映画館協会が選ぶ日本未公開作品の上映、〈韓国映像資料院〉が修復した1950年代の傑作群を上映します。12月には、1980年代を中心に韓国のニューウェーブ作品上映します。これだけの韓国映画を一挙にスクリーンにかける機会は当分ないと思います。
韓国のカルチャーは日常に浸透しています。釜山もソウルも、飛行機に乗れば東京よりも近い。でも、韓国の「ちょっと昔」のことは、あまりよく知らないのではないでしょうか。
新しい才能の登竜門PFF(ぴあフィルムフェスティバル)との共同企画として、収蔵作品のなかから〈アジアのニューウェーブ〉作品をリサーチし始めました。フランスで起きたヌーベルバーグ=ニューウェーブの影響は、10-20年ぐらいの時間をかけてじっくりと、アジアの各国から出てくる才能に影響を与えていました。19世紀末に発明された、技術としての映画は、20世紀になる頃には世界各地にあっという間に広がっていきました。それに比べて、ニューウェーブは、アジアに伝わるのにはだいぶ時間がかかっている。それは、当時外国映画が自由に見られる環境が、あまりなかったことが要因のひとつといえると思います。アジアには、権威主義的な政治体制があちこちにありました。いろいろな壁を超えて、韓国は、1980年代が、ようやく波が届いた時代でした。
1960年代フランスのヌーベルバーグと同時期、南米ボリビアで活動を開始したウカマウ集団は、先住民の目線に立った映画制作を貫いています。ヌーベルバーグの代表的作家ゴダールは、ウカマウ集団を高く評価し、共感を示しています。ニューウェーブは、ただ何か真新しい映画作りを標ぼうしたのではなく、凝り固まった既存の映画制作に対しての若い世代からの反発でもあり、そこには社会や権威に対する異議申し立てとも深く繋がっています。ニューウェーブは、オルタナティブな映画のあり方として、世界中に根を下ろし、現代の映画にも脈々と繋がっています。(学芸員・杉原)


12/4木11:00 12/13土11:00  韓国ニューウェーブの源流

馬鹿たちの行進 
The March of the Fools

1975/韓国/カラー/101分

監督:ハ・ギルチョン 
原作・脚本:チェ・イノ 
出演:ユン・ムンソプ、ハ・ジェヨン



ピョンテとヨンチョルは大学生。二人は合コンで女学生のヨンジャ、ヨンスクと仲良くなる。ピョンテはヨンジャと、ヨンチョルはヨンスクと付き合うがうまくいかない。閉塞した社会状況での学生たちの無軌道なバカ騒ぎを描いた作品で、1970年代を代表する作品。当時の若者たちから熱狂的に支持された〈馬鹿シリーズ〉第1作。

12/4木14:00 12/20土14:00   監督イ・チャンホ(イ・ジャンホ)

風吹く良き日
Good Windy Days

1980/韓国/カラー/117分

監督:イ・チャンホ 
出演:アン・ソンギ、イ・ヨンホ



中華料理屋の出前持ちのトッペ、ホテルのボーイのキルナム、理髪店の雑用係のチュンシク、3人は田舎からソウルに出てきて出会い、夜になると一緒に酒を飲んでは鬱憤をはらす友人となる。都会で一旗揚げようともがく3人の若者のナイーブな青春群像で、愛すべき青春映画の傑作である。トッペ役のアン・ソンギは子役から脱皮し、本作以降韓国映画を代表する俳優になる。

12/5金11:00 12/17水14:00   監督イ・チャンホ(イ・ジャンホ)

寡婦の舞
Widow’s Dance

1983/韓国/カラー/109分

監督:イ・チャンホ 
出演:イ・ボヒ、パク・ウュンスク


日本人の恋人に捨てられたヒロインのマルスクは、結婚詐欺で逮捕され、子連れの男と結婚するが、今度はインチキ宗教にだまされてしまう。1980年代の韓国を象徴するイ・チャンホ監督の傑作。ヒロインのイ・ボヒは、イ・チャンホ監督とのコンビで「馬鹿宣言」「旅人は休まない」など数多くの傑作に主演する。


12/5金14:00 12/20土11:00   監督イ・チャンホ(イ・ジャンホ)

馬鹿宣言
Declaration of Idiot

1983/韓国/カラー/92分

監督:イ・チャンホ 
出演:イ・ボヒ、キム・ミョンゴン


1980年代韓国映画屈指の作品。ドンチョルは女子大生のヘヨンに一目ぼれ。仲間のユントクと一緒にヘヨンを誘拐するのだが、実は彼女は娼婦だった。二人は娼婦街で雑用係として働き、新人の娼婦を足抜けさせようとして失敗、追い出されてしまう。当初、映画が検閲を通過できず、即興演出を施して作りなおした。荒唐無稽な構成が、かえって世界の映画祭で大評判となった。

12/6土11:00 12/11木14:00   監督ペ・チャンホ + 脚本チェ・イノ

赤道の花
A Tropical Flower

1983/韓国/カラー/104分

監督:ベ・チャンホ 
原作・脚色:チェ・イノ 
出演:アン・ソンギ、チャン・ミヒ


ある青年が向かいのマンションに住む美しい女性に一目惚れする。青年は毎日彼女をのぞき見するうち、彼女が会社社長の愛人であることを知る。青年は彼女を不幸な境遇から救いだそうとする。ヒッチコック「裏窓」を想起させるサスペンス映画、疎外された都会人の孤独をテーマにしている。

12/11木11:00 12/19金14:00   監督ペ・チャンホ + 脚本チェ・イノ

鯨とり-コレサニャン-
The Whale Hunter

1984/韓国/カラー/111分

監督:ベ・チャンホ 
原作・脚本:チェ・イノ 
出演:アン・ソンギ、キム・スチョル


何の取り柄もない大学生ピョンテは、街で女にだまされ警官に捕まるところを、「親分」と言われる浮浪者に助けられる。二人は虐待を受ける売春婦チュンジャを助け出し、故郷へ連れて行こうとする。この年の最大のヒット作となった本作は、韓国映画史に欠かせない名作であり、「親分」を演じるアン・ソンギの躍動感溢れる演技は卓抜。

12/12金11:00 12/18木14:00   監督ペ・チャンホ + 脚本チェ・イノ

ディープ・ブルー・ナイト
Deep Blue Night

1984/韓国/カラー/110分

監督:ペ・チャンホ 
原作・脚本:チェ・イノ 
出演:アン・ソンギ、チャン・ミヒ


アメリカに密入国したペクは、LAに住むジェーンと偽装結婚をして永住権を取得しようとする。ペクは永住権を取得した後は韓国から恋人を呼ぶつもりだった。ところがジェーンは次第にペクのことを好きになっていく。それまでの韓国映画にはない多額の予算で、全編アメリカでロケされた最初の韓国映画。興行的にも大ヒットし、韓国国内の映画賞では作品賞や監督賞など主要な賞を独占した。

12/12金14:00 12/19金11:00   監督ペ・チャンホ + 脚本チェ・イノ

黄真伊(ファン・ジニ)
Hwang Jin-yi

1986/韓国/カラー/119分

監督:ペ・チャンホ 
脚本:チェ・イノ 
出演:チャン・ミヒ、チョン・ムソン


ジニは名家の娘だが、結婚後家が没落する。ジニはいつしか評判の妓生(きしょう)になっていた。ある日彼女は政敵に追われる学者と出会う。ジニは彼を助けようと一緒に旅にでるのだが、流浪の旅の中で次第に彼女は病んでいく。人気監督となったペ・チャンホが芸術的完成度を求めて作成した映画。李朝時代に実在した妓生・ジニの生涯を、溝口健二の映画を参考にして格調高く描き出す。

12/10水14:00 12/18木11:00   監督イ・チャンホ(イ・ジャンホ)

旅人は休まない
The Man with Three Coffins

1987/韓国/カラー/105分

監督:イ・チャンホ 
出演:イ・ボヒ、キム・ミョンゴン


公務員のスン・ソクは妻に先立たれ、妻の遺骨を故郷の北朝鮮に返そうと国境近くの村にやって来る。国境を越えられないスンは、宿屋で妻にそっくりの女性チェと出会う。南北に分断された国家の悲哀が全編を覆っており、放浪の旅を続けるスンはまるで黄泉の国をさまよっているようである。1987年東京国際映画祭で国際批評家賞を受賞。

上映スケジュール

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