企画上映
戦後80年:アジアと日本と戦争
第3期:その後のアジア、戦争の傷跡
戦後80年の節目に、日本とアジア各国の双方の視点から戦争を見つめます。
9/4(木)~9/7(日)、9/10(水)~9/15(月祝)、
9/18(木)~9/21(日)
◎すべて福岡市総合図書館収蔵作品・特に表記ないもの35ミリフィルム上映
観覧料:
大人=500円/大学生・高校生=400円/中学生・小学生=300円
・福岡市在住の65歳以上の方・わたすクラブ会員=250円(要証明書・会員証原本提示)
・障がい者の方および介護者の方1名=無料(要証明書提示)
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2025年は終戦から80年の節目になります。7月は、戦前・戦中に作られたり、後年その時期を描いたりしたアジアと日本の映画を横断的に、双方の視点が入り混じるように特集します。この時期は、政治的な意図をもって製作されたプロパガンダ映画が目につきます。ただ、個々の映画を見てみるとただ当局の意図を喧伝するだけではなかったことも見つけることができます。たとえば亀井文夫(1908-1987)による「戦ふ兵隊」(1939)は、軍部の依頼で製作されながら、描き方が厭世的という理由で当時公開中止になってしまいます。
映画はカメラで撮影されます。レンズとフィルムという機械の目をとおしてとらえられた世界は、冷徹なまでに客観的です。撮られたものは、依頼した製作者や、時には作者の意図をも超えてしまうことがあります。これは、映画というメディアに生来備わった重要な性質です。
3期に分けて約30本の映画を上映予定です。そんなにたくさん、遠い過去の出来事を今更古いフィルムで見るなんてと思われるかもしれません。今回の特集では記録映画だけではなく、劇映画も多く盛り込みます。そこには脚色も演出もありますし、一見戦争と関係ない作品もあります。勇ましい、もしくは疲れ切った前線を取材できたとしても、そのときの市井の人たちの暮らしというのは、しばしば見落とされます。当時のことは、時間が経ってからでないと語りえないこともあります。フィクションだからこそ伝えられる真実もあるでしょう。ある時点に正義であったことが、後年振り返って別の批判にさらされることもあります。記録された映画は、時代や見る人の解釈によって常に変化します。
日本もアジアの国々も20世紀の後半は、社会のあらゆる側面に戦争の影響を受けつつ、映画を作ってきました。8月には「終戦・戦後」の日本映画を、9月には「その後のアジア、戦争の傷跡」と題して、アジアの映画を中心として、3つの期間に分けました。紛争や戦争はずっと続いています。そのきっかけは20世紀の戦争に端を発するものが少なくありません。7月に上映する「苦悩のリスト」「子どもたちはもう遊ばない」も、問題の源流をたどれば、当時の戦争とその戦後処理の問題がいまだに世界に影響している一例でもあります。
遠い国の、遠い出来事が、地続きであるということと、20世紀半ば、まだ新しいメディアであった映画は負の面でも、正の面でも大きな役割を果たしていたことを知る機会になれば幸いです。 (学芸員・杉原)
9/4[木]14:00 9/13[土]14:00
血と祈り
The Long March
1950/インドネシア/白黒/129分/日本語字幕付き
監督:ウスマル・イスマイル
出演:デル・ジュザン、ファリダ
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1948年12月。インドネシアはオランダとの独立戦争を戦っていた。中部ジャワに駐屯していたシリワギ部隊は西ジャワへ戻るように命令を受ける。隊長スダルトと彼の部隊の人間模様を描く。本作はインドネシア政府が認める最初のインドネシア映画でもある。※本作は途中、音声と映像がずれている箇所があります。ご了承ください。
9/5[金]11:00 9/13[土]11:00
廃墟からの旅立ち
The Ruins
1956/フィリピン/白黒/120分/日本語字幕付き/16ミリフィルム上映
監督:ランベルト・V・アベラーナ
出演:トニー・サントス、ローサ・ロサル
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朝鮮戦争から負傷して帰還したヴィクトールは、仕事もままならず厭世観にとらわれてしまう。クラブで働くティタはそんな彼の面倒をみる。ティタたちは廃墟となった教会に暮らしていたが、役所から教会の取り壊しのために退去命令がでるのであった。イタリアのネオレアリズモを彷彿とさせるタッチの作品。
9/4[木]11:00 9/15[月祝]11:00
トゥー・ハウ
Mrs.Tu Hau
1963/ベトナム/白黒/78分/日本語字幕付き
監督:ファム・キー・ナム
出演:チャー・ザン、バー・ズー
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抗仏戦争時代。助産婦のトゥー・ハウは、敵の士官に犯されてしまう。彼女は自殺を考えるが思いとどまり、そして、夫の死後、ゲリラとなって戦うのだった。モスクワ映画祭で銀賞を獲得し、ベトナム映画が初めて国際映画祭で受賞した作品となる。ベトナム映画史初期を語るとき欠かせない作品。
9/10[水]14:00 9/20[土]14:00
サンダカン八番娼館・望郷
Sandakan No. 8
1974/日本(東宝=俳優座)/カラー/121分
監督:熊井啓
出演:栗原小巻、田中絹代、高橋洋子
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女性史研究家・三谷圭子は天草に「からゆきさん」の調査にやって来る。彼女は老婆サキと出会い、サキの家で寝食を共にし、やがてサキは自らの過去を語り始める。明治終わりから第1次世界大戦にかけて娼婦として南洋に送られた女性たちを描いた感動作。サキを演じた田中絹代はベルリン映画祭銀熊賞(女優賞)受賞。
9/11[木]14:00 9/14[日]11:00
おかあさんはおるす
While the Mother is Away
1979/ベトナム/白黒/65分/日本語字幕付き
監督:グエン・カイン・ズー
出演:ヴァン・ズン、ホン・ズエン
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ベトナム戦争時代のメコンデルタに、母親と5人の子どもが暮らしていた。母親は合図があるとどこかへ出かけてしまう。その間10歳の長女ベーを中心に子どもたちだけの生活が始まる。描かれるのは子どもたちの悪戦苦闘しながら生活する様子で、切なさと愛しさに満ちたベトナム映画の名作の1本。
9/12[金]11:00 9/21[日]11:00
はじけ鳳仙花
-わが筑豊 わが朝鮮-
1984/日本(幻燈社)/カラー/48分/16ミリフィルム上映
監督:土本典昭
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本作は、画家の富山妙子の原案によるもので、彼女が制作する作品を中心に描いたドキュメンタリー。日本に連れてこられた朝鮮人炭鉱夫を描いたリトグラフの制作風景。彼女の作品を使って、名もなき朝鮮人炭鉱夫の物語を語る「身世打鈴」などが挿入される。彼女の創作世界を映画は様々な観点から表現する。
9/5[金]14:00 9/21[土]14:00
太白山脈
The Taebaek Mountains
1985/韓国/164分/カラー/日本語・英語字幕付き
監督:イム・グォンテク
出演:アン・ソンギ、キム・ミョンゴン
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日帝時代が終了してから、1950年に朝鮮戦争が始まるまでの混乱した時代を描いた巨匠イム・グォンテク監督作品。韓国南部の町ブルギョを舞台として政府軍と共産勢力の争いが展開される。イデオロギーに翻弄された民族の悲しみを描き出し、イム監督が鎮魂の想いを込めた傑作。
9/6[土]14:00 9/19[金]14:00
ゆきゆきて、神軍
The Emperor's Naked Army Marches On
1987/日本(疾走プロダクション)/カラー/121分
監督:原一男
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奥崎謙三は、第二次大戦中ニューギニアに派遣され、千数百名の兵士の中で生き残った30数名の一人となった。戦後奥崎は天皇の戦争責任を叫び、活動を続ける。戦争という極限状態の中での人間の在り方などを問いかける奥崎の行動を本作は記録し、日本映画監督協会新人賞など多くの映画賞を受賞した衝撃作。
9/6[土]11:00 9/12[金]14:00
レッド・ロータス
Red Lotus
1988/ラオス/白黒/83分/日本語・英語字幕付き
監督:ソムオック・スッティボン
出演:ウォンドゥアン・ポンサワン、ソムチット・ウォンサムアーン |
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第二次大戦後ラオスでは、共闘していた独立運動家たちが二派に分裂した。本作は1975年のラオス愛国戦線による全土解放前夜を描いている。主人公はブアデーン(赤い軍)という名前のヒロインであり、彼女の母親は王国政府側の政治工作員と再婚してしまう。そして、ブアデーンにも結婚を押しつけようとする。
9/7[日]14:00 9/18[木]14:00
バナナパラダイス
Banana Paradise
1989/台湾/148分/カラー/日本語・英語字幕付き
監督:ワン・トン
出演:ニュー・ツエンズ、チャン・シー
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1949年。門栓と徳勝という二人の国民党兵士が台湾にやって来る。二人は元農民で政治的な信念などなかった。徳勝は、共産党員と疑われて拷問され気が狂う。門栓は、軍隊を逃げ出し身分を偽って暮らしていく。本作に登場する兵士の運命は台湾の歴史そのものでもある。名匠ワン・トン監督の代表作で、台湾映画の傑作。
9/7[日]11:00 9/15[月祝]14:00
空白のページ
White Page
1991/カンボジア=スイス/カラー/99分/日本語・英語字幕付き
監督:ホー・クアン・ミン
出演:プァン・デゥン、ワン・ティー
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70年代後半、クメール・ルージュの幹部を夫にもつウァスナーはパリから帰ってくる。空港に着くと、兵士たちにキャンプと呼ばれる村に連れていかれる。村では、アンカーと呼ばれる神のようなものが信奉されていた。ポル・ポト政権での徹底的な共産主義政策の実態を初めて描き、世界中の映画祭で衝撃を与えた。
9/11[木]11:00 9/14[日]14:00
蟻の兵隊
The Ants
2005/日本(蓮ユニバース)/カラー/101分
監督:池谷薫
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終戦時、中国国民党系の軍閥と密約を交わした日本軍司令官の命により、山西省にいた日本軍59,000人のうち2,600人が残留兵として中国に残り、3年間にわたり国民党兵として共産党軍と戦った。帰国後、日本政府は、軍籍を抹消し、逃亡兵として恩給の支払いを拒む。残留兵のひとりとして問題の真実を追い続ける奥村和一を追う。
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