通常上映

映画を駈けぬける 

誰かのため、自分のため、記録を残すために今、全力で走る。息を切らして追いかけ、追われて必死に逃げる。「走る」というアクションが印象的な数々の作品のなかから、時代を駈けぬけ、映画史を彩った秀作映画を特集します。

◎すべて総合図書館収蔵/特に表記のないもの35ミリフィルム上映

会 期: 5月3日(金・祝)~5月30日(木)※休館日・休映日除く
観覧料: 
大人=500円/大学生・高校生=400円/中学生・小学生=300円/福岡市在住の65歳以上の方・「わたすクラブ」会員=250円(要証明書・会員証原本提示)/障がい者の方および介護者の方1名=無料(要証明書提示)


5/3金・祝11:00 5/15水14:00

無法松の一生

1943年/大映/79分/白黒

監督:稲垣 浩 
出演:阪東妻三郎 月形龍之介




北九州の小倉を舞台に、博打好きで喧嘩っ早い人力車夫・松五郎の生涯を描く。岩下俊作の原作を伊丹万作が脚本化。病床の伊丹に代わり稲垣浩が監督し、映画化した。その後数度映画化された中で、最も古いバージョン。

5/4土・祝11:00 5/10金14:00 
(「海魔陸を行く」「三等賞の小山羊」は2本立て上映です )

海魔陸を行く

1950年/ラヂオ映画社/57分/白黒/16ミリフィルム上映 

監督:伊賀山正徳 
声:徳川夢声




生きた本物の蛸が主役。映画はストーリー仕立てになっており、魚屋の桶から逃げ出した蛸が、様々な危険をかいくぐって陸の冒険を続け、最後は海に帰って行くというもの。飄々とした徳川夢声の語りも楽しい。

三等賞の小山羊

1959年/貯蓄増強中央委員会/38分/白黒/16ミリフィルム上映 

監督:佐藤武 
出演:長谷部健 



小学生の次郎は役場で飼われている山羊が大好きで、いつか飼うことを願っている。その山羊が、村祭恒例のマラソン大会の三等賞の賞品として出品されることを知る。物語のテンポが良く、走るシーンの躍動感が素晴らしい秀作中編。

5/5日・祝11:00  5/16木14:00

妖刀物語 
花の吉原百人斬り

1960年/東映/108分/カラー 

監督:内田吐夢 
出演:片岡千恵蔵 水谷良重





江戸時代。寺の門前に捨てられた赤ん坊は裕福な商人の夫婦に拾われ、次郎左衛門と名付けられる。次郎左衛門は熱心に働き店を継ぐが、生まれつき顔に醜い痣があり、結婚することができなかった。ある日友人に誘われ吉原に行った次郎左衛門は、遊女の玉鶴と出会い夢中になる。歌舞伎の原作を脚本化した作品。現代的な視点を盛り込み、内田吐夢監督の時代劇の代表作として高く評価された。

5/6月・休11:00 5/17金14:00 5/29水11:00

キューポラのある街

1962年/日活/99分/白黒

監督:浦山桐郎 
出演:吉永小百合 浜田光夫





埼玉県川口市。朝鮮戦争が終わり、多くの工場が不景気だった。高校受験を目指すジュンの父親は工場を解雇されてしまう。修学旅行に行くお金もないジュンは進学をあきらめるのだが、先生たちの励ましで定時制高校に行く決心をする。浦山桐郎監督のデビュー作で吉永小百合を一躍スターにした記念すべき傑作。当時18歳の吉永小百合は史上最年少でブルーリボン賞を受賞した。


5/3金・祝14:00 5/9木14:00

あるマラソンランナーの記録

1964年/東京シネマ/63分/カラー

監督:黒木和雄 
ナレーター:城達也





東京オリンピックのマラソン候補選手だった君原健二の日常と練習風景を記録したドキュメンタリー映画。元々富士フイルムのPR映画として企画され、様々なスポーツ選手を追う予定だったが、監督の希望で君原一人に焦点を絞って撮影された。故障により別府で静養する姿や北九州市でトレーニングする君原が描かれる。


5/4土・祝14:00 5/9木11:00

網走番外地 悪への挑戦

1967年/東映/90分/カラー

監督:石井輝男 
出演:高倉健 嵐寛寿郎




橘真一は鬼寅親分に誘われて福岡にやってくる。鬼寅は少年の更生施設を経営していた。施設にいる武と真一は仲良くなるのだが、武が昔所属していた門馬組は、敵対する港組組長の殺害を武にやらせようとする。主演の高倉健そして東映任侠映画の代表的シリーズだった「網走番外地」の第9作。64年に竣工した博多ポートタワーや愛宕神社、中洲など福岡市内の各地で撮影されている。

5/5日・祝14:00 5/10金11:00 

肉弾

1968年/「肉弾をつくる会」=ATG/116分/白黒 

監督:岡本喜八 
出演:寺田農 大谷直子





昭和20年。ドラム缶に乗って海を漂う「あいつ」は、戦争が終わったことも知らずに敵を待ち続ける。本作に登場する「あいつ」は監督自身を戯画化したもの。監督は陸軍予備士官学校に入校し、21歳の時終戦を迎えている。戦争のために空しく費やした青春の滑稽さと、やり場のない怒りが本作には溢れている。岡本監督の代表作。


5/6月・休14:00 5/18土11:00 5/30木11:00

博多っ子純情

1978年/松竹/94分/カラー

監督:曽根中生 
出演:光石研 松本ちえこ





郷六平は博多に住む中学2年生。女性に興味が出て、友人たちとはいつも女の話。そのため幼馴染の小柳類子との関係も変わって来ていた。ある日六平は万引きをする中学生を見つけて咎めるが、逆に袋叩きにされてしまう。長谷川法世の漫画を映画化した作品。当時の博多の街中で撮影されていることが見もの。当時16歳の光石研(北九州市出身)がオーディションで主役に抜擢され、鮮烈なデビューとなった。

5/11土11:00 5/23木14:00 

転校生

1982年/日本テレビ放送網=ATG/113分/カラー 

監督:大林宣彦 
出演:小林聡美 尾身としのり





中学生・斉藤一夫のクラスに幼馴染だった斉藤一美が転校してくる。ある日二人は喧嘩をして神社の階段を一緒に転げ落ちてしまう。すると、二人は体が入れ替わっていることに気づく。男の子と女の子の体が入れ替わることで起きる騒動を描いたファンタジックコメディ。大林監督の「尾道三部作」の一作としても知られる作品で、以後の大林監督のスタイルを確立した傑作。


5/15水11:00 5/26日14:00 5/29水14:00

駆ける少年 
The Runnner 

1984年/イラン/91分/カラー/日本語字幕付き

監督:アミール・ナデリ 
出演:マジッド・ニルマンド ムサ・トルキザデエ




舞台は70年代初頭のイラン。身よりのない少年が厳しい社会のなかでたくましく生き抜いて行く姿を描いた作品。主人公のアミルのキャラクターには、監督のアミール・ナデリの体験が色濃く反映されている。85年ナント三大陸映画祭グランプリを受賞したイラン映画の金字塔。

5/16木11:00 5/25土11:00 5/30木14:00

友だちのうちはどこ? 
Where is the Friend’s Home?

1987年/イラン/83分/カラー/ 日本語・英語字幕付き

監督:アッバス・キアロスタミ 
出演:ボバック・アマドプール アマッド・アマドプール




アーマッドは友達のレザのノートを間違えて持って帰ったことに気が付く。アーマッドはノートを返そうと隣村のレザの家を探す。しかしレザの家はなかなか見つからない。さわやかな感動を呼ぶ作品で、秀逸なラストはすべての観客の胸を打つ。世界的に知られるキアロスタミ監督の代表作の1本で、80年代イラン映画を代表する傑作と言われている。

5/17金11:00 5/19日14:00

娃娃(ワワ)と子豚 
A Piggy Tail

1991年/台湾/101分/日本語・英語字幕付き

監督:クー・イーチュン 
出演:ホアン・シアユン





台北に住むチェさん夫婦の元に、両親を事故で亡くした女の子のワワが、ペットの子豚のバラと共にやってくる。田舎育ちのワワとバラは学校や家庭で大騒動を巻き起こす。
台北の子ども達の生活が細かく描かれ、大人から子供まで楽しめるホームドラマの傑作。人間顔負けの演技を見せる子豚のバラの活躍が楽しい。


5/12日14:00 5/22水11:00

天使のような子どもたち
Children of the Heaven

1997年/イラン/88分/カラー/日本語・英語字幕付き

監督:マジド・マジディ
出演:モハマド=アミル・ナージ バハレ・セッデギ



少年アリは妹の古い靴を修理に出すが、途中で靴を無くしてしまう。家族に言い出せないアリは、自分の靴を妹と交互に履いて学校に行く。ある日マラソン大会があり3等の商品が運動靴であることを知ったアリは、妹のために出場する。「運動靴と赤い金魚」という題で日本でも公開された傑作。

5/11土14:00 5/23木11:00

運命からの逃走
Who is Running?

1997年/タイ/105分/カラー/日本語・英語字幕付き

監督:オキサイド・パン 
出演:サンヤー・クンナゴーン ナッタリガー・タンマプリダーナン



ジァップとワーンは結婚を予定していた。ところがワーンは交通事故で危篤状態となる。そしてジァップの前に謎の僧侶が現れ、5人の命を救えばワーンは助かると告げ、未来の死亡事故が乗った新聞を手渡す。特撮技術を駆使した娯楽作品で、タイで大ヒットし日本でも公開された。輪廻転生という仏教的な考えを元にしている点がタイらしい。


5/12日11:00 5/24金14:00

百年の絶唱

1998年/スピリチュアル・ムービーズ・プロダクション/87分/カラー/16ミリフィルム上映

監督:井土紀州 
出演:平山寛 葉月蛍



うち棄てられた「物」や「土地」に宿る怨念を描いた、痛切な魂の物語。1998年に渋谷ユーロスペースで公開され、僅か8日間の上映にもかかわらず、およそ1,000人もの観客を動員した、1990年代屈指の映画。8ミリフィルムゆえに上映が限定されたまま今に至っている。今回は当館が作製した16ミリ版を上映。

5/18土14:00 5/24金11:00 

追いつ追われつ
Senario Again

1999年/マレーシア/120分/カラー/日本語・英語字幕付き

監督:アズィス・M・オスマン 
出演:アズリ・ジャーファル ヤスィン・ヤーヤ





アズリは中古車を買い家族旅行に出かける。ところが車にはまだオーナーがいて、店の店員マスランはアズリを追う。ところがアズリは車を盗まれてしまい、マスランと共に泥棒を追いかける。この映画に登場する主要人物は「シナリオ」というマレーシアで人気の5人組のグループである。5人のギャグやカーチェイス、インド映画のような踊りなど娯楽性溢れる作品で、マレーシア映画史上第2位の興行成績をあげた大ヒット作。

5/19日11:00 5/25土14:00

いきなり、ダンドゥット
Suddenly Dangdut

2006年/インドネシア/95分/カラー/日本語・英語字幕付き

監督:ルディ・スジャルウォ 
出演:ティティ・カマル




ペトリスは人気のロックスター。しかしある日警察に麻薬所持の疑いで逮捕される。隙を見て逃げ出したペトリスはダンドウットの演奏グループに紛れ込む。ダンドウットとはインドネシアの大衆音楽。貧しい民衆の歌であり生活の苦しさや圧政を皮肉に変えて歌う。テンポの良い展開と豊かな娯楽性の中にインドネシア社会の問題が盛り込まれた秀作。

5/22水14:00 5/26日11:00

どん底
Slingshot

2007年/フィリピン/86分/カラー/日本語・英語字幕付き/デジタル上映


監督:ブリリャンテ・メンドーサ
出演:ジロー・マニオ ジャクリン・ホセ





マニラのスラム街。犯罪撲滅運動で警察の手入れがあり大勢の男たちが逮捕される。しかし翌日には市議の力により、みんな釈放される。輪タクの運転手のカイロ、麻薬常習者であるカイロの友人のレックス、強盗を行うエルモたち3人組などスラムで暮らす人々の群像劇である。みな犯罪をしなければ生きていけない人々だが、彼らの虚々実々のやりとりが、まるでドキュメンタリーのように進行していく。現代フィリピン映画の巨匠ブリランテ・メンドーサ監督作品。

COLUMN
フィルム上映とデジタル上映

福岡市総合図書館は世界各国の、特にアジアの映画に注力して収蔵・アーカイブ活動を継続しています。シネラのように、フィルムで撮影された映画を、フィルムで上映することはとてもレアな時代になりました。
映画の歴史はテクノロジーの発展とともにあります。収蔵している映画のフォーマット(制作時の形式、上映時の形式)にも時代の変化が反映されています。映画が誕生してからおおよそ一世紀にわたっては撮影にも上映にもフィルムが使われていました。1990年代から様々なデジタル技術が映画制作に導入され、2000年代には映写もフィルムからデジタルへと徐々に移行します。DCP(デジタル・シネマ・パッケージ)と呼ばれる上映データ形式とその基準が定められることによって、世界中で一気にデジタル化が進みます。今、私たちが一般的な映画館で見る映画は、このDCPに仕上げられたデジタルデータです。
最近よく目にする「デジタルリマスター版」と銘打って上映される作品は、当時のフィルムをスキャン・修復し、DCP上映しています。2月の「チネマ・リトロバード映画祭」もほとんどの上映がDCPでなされました。
デジタルの良いところはいくつも挙げることができます。しかし(経験がある方も多いかもしれませんが)デジタルデータは何かのきっかけに一瞬にしてなくなってしまうことがあります。一方、フィルムは適切な管理化では100年以上「保存することができた」ことは時の流れが証明しています。
「デジタルリマスター」すればフィルムはお役御免というわけにもいきません。ほんの数年前は2K修復だったものが今は4Kが一般的です。過去実現できなかった映像の修復が、4Kだからできたということも耳にします。もっと高精細にリマスターできる時代は遠くないでしょう。
フィルムが残っていれば未来のテクノロジーに対応して、ある映画が歴史的に再度位置づけられることもあるでしょう。それだけフィルムは情報量の豊かなメディアでもあります。映画をオリジナルの状態で残すことはフィルムアーカイブの最大のミッションなのです。(学芸員・杉原)


上映スケジュール

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